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コロサイ人への手紙 1章 2章 3章 4章
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秘宝 スカボック-2 C 闇文明 (5) クリーチャー:パンドラボックス/ディスタス 2000 ■G・ストライク ■ササゲール2(ディスペクターを召喚する時、コストを2少なくしてもよい。そうしたら、このクリーチャーを破壊する。そのディスペクターのコストは0以下にはならない) 作者:ベルモット 《残念秘宝スカボックス》がディスタス化したカードです。 フレーバーテキスト 残念!大ハズレ! 関連 《残念秘宝スカボックス》 評価 選択肢 投票 壊れ (0) 強い (0) 普通 (0) 弱い (0) 名前 コメント
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【スカボム防衛】 ・準備 弓を大量に置く。50万でも十分とはいえない。 トラポとバリスタは逃がす。 エースヒーローを置く,heroloyal フェスティングホール枠空け 柵 PC時刻合わせ 別の街から歩兵、馬を100ずつぐらいを送って肉壁が尽きないようにする。時間差で複数送る ・食らったら Heal で兵回復 Comfort - Disaster Relief で街不満解消 Hero-loyalty 回復 Heroレベル上げ Hero捕縛確認 柵細かく作成 ・門openするとき こちらの軍があるとき(弓20万以上+肉壁の歩兵馬類+柵)に馬、弓がきた。トラポ系 スカボム→弓を逃して歩兵や馬にあてさせる。 不在確認のための試投の初弾スカボム1,2発は、あえて食らうというのもよし。閉じてスルーするのが無難 ・門closeするとき 時間を合わせた一斉弾は【全閉】。 1発目しか油は時間合わせられない。その後バラバラで来るものをじっくりよく見て避ける。 1発目はトラポ系はまだ来ていないはず ラグでうまくいかないときもあるので無理せず閉を優先する。 スカボム単体 →弓塔に当てれば理想。なくてもヌルー 弓・馬 →こちらの軍がすくないとき(弓20万以下、柵なし、肉壁なし) ※ 弓20万以上・柵・肉壁をキープすれば、相手のスカボム以外の攻撃をほぼ無傷で倒せる。 相手の弓・馬を減らしてスカボムだらけになったら、スカボムを馬や歩兵に当てるなどして相手のスカを減らす。
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前ページ次ページSERVANT S CREED 0 ―Lost sequence― アルビオン大陸の玄関口の一つである、港街スカボロー。 現在、その大広場に備え付けられた絞首台が、明日の公開処刑を、今か今かと待ちわびていた。 その横には誇らしげに『レコン・キスタ』の三色の旗が翻っている。 「聞け! 処刑の告知だ! 王党派に属していた者達が、貴族会議により国賊と認められた! 明日の正午、スカボローの中央広場で、公開処刑を行う! 尚、処刑には先日終結した革命戦争の英雄、ワルド子爵が立ち合い、演説することとなっている!」 広場のはずれで、街の先触れが、道行く人々に処刑の知らせを叫び伝えている。 その周りに出来ていた人だかりの中を、白のローブを身にまとい、フードを目深に被った男が歩いていた。 一見派手な格好だが、その存在は驚くほど希薄。果たしてその男とは、エツィオ・アウディトーレその人であった。 「……」 エツィオは無言で処刑場の周囲を見渡し、周囲の状況を頭の中へと叩きこんでゆく。 広場に面した通りの数を確認し、侵入経路、及び逃走経路を頭の中で構築しながら、広場を練り歩いていた。 そんなエツィオに、腰に下げたデルフリンガーがカチカチと音を出した。 「感じはどうだ? 相棒」 「今は警備が手薄みたいだが……当日はそうはいかないだろうな。 当日の警備の状況が分かればいいんだが……さて、どうしたものか」 広場を巡回する、レコン・キスタ……いや、今は神聖アルビオン共和国の衛兵を横目に、エツィオが呟いた、そのときだった。 その衛兵に向かい、もう一人の衛兵が駆け足で近寄り、なにか話し始めた。 エツィオは群衆に紛れ、その会話に耳を傾ける。 「明日の警備配置が決まったぞ、詳細はこの地図を見ろってさ」 「ああわかった、……あぁくそっ、俺は外の警備か、王党派の連中が吊るされるのを、この目で見たかったぜ!」 「残念だったな、ま、俺は特等席で見物させてもらうとするぜ」 「お前はどこの警備なんだ?」 「へへ、実を言うとな、絞首台の真横なんだ、処刑を間近で見れるんだぜ! しかも処刑には我がアルビオンの英雄、ワルド子爵殿が立ち合い、演説をするそうじゃねぇか」 「おいおい、すげぇな! 俺と替わってくれよ!」 「冗談じゃねぇや、ハッハッハ! これを機に子爵殿に気に入られて出世コースも……ああ、夢が膨らむぜ……」 「くそっ、せいぜいおべっかの練習でもしておくんだな!」 「そんなにひがむなよ、さて、俺はもう行くぜ」 衛兵たちは、そんな会話をすると、それぞれの配置に戻るべく、歩き出した。 彼らの会話を盗み聞いていたエツィオは、紛れていた群衆を離れ、ゆっくりと先ほどの衛兵の一人に近づいてゆく。 息を殺し、極限まで気配を絶つ、衛兵のポケットから素早くメモを掠め取り、即座にその場から離れた。 「お見事」 「ちょろいものさ」 その様子を見ていたデルフリンガーが茶化すように言った。 ベンチに腰かけ、エツィオは小さく笑うと、地図を広げ、当日の警備の配置を頭に叩きこむ。 警備が手薄であろう場所を割り出し、消すべき衛兵に目星をつけていた、その時だった。 ごぉん……ごぉん……と、広場に面する教会の鐘楼が、正午を告げる鐘を鳴らす。 鐘が鳴り終わり、しばらくすると、今度は教会の扉が開いた。 すると中から、礼拝を終えたのであろう、純白のローブを身にまとった神学者達が、ぞろぞろと出てくるのが見えた。 「……正午か」 小さく呟き、なんとなしに神学者達を見つめていたエツィオだったが……。 何かを思いついたのか、ベンチから立ち上がると、一直線に教会へ向かい、ファサードをよじ登る。 道行く人々が驚いたような顔をしていたが、エツィオは全く意に介さずに屋根へとよじ登った。 それからエツィオは、同じように鐘楼をよじ登ると、塔の上から広場全体を見渡し始める。 広場から少し離れた場所に、同じようにもう一件、教会が立っているのが見える、 その教会からも、正午の鐘の音と共に、帰路へとつく人々の姿が見えた。 その様子を見ながら、エツィオは腰に下げたデルフリンガーに尋ねる。 「デルフ、礼拝はいつもこの時間に終わるのか?」 「ああ、いつもこの時間みたいだな」 「そうか……となると……」 エツィオは小さく呟くと、地図を広げ、広場とを見比べながら何やら考え込んでいた、そのとき。 鐘楼の上に佇むエツィオの元に、一羽の鳩が飛んでくる、果たしてその鳩は、マチルダの伝書鳩であった。 エツィオは鳩を腕に止まらせると、手紙を取り出し、中を読む。 手紙には、スカボローへの到着予定時刻、そしてワルドの予定が大まかに記されていた。 どれもエツィオが事前に調査を頼んだ事である。ここまで調べられるということは、どうやら彼女は現在、ワルドと行動を共にしているようだ。 「到着は今日の夜か……到着後迎賓館に……公開処刑に合わせ広場へ……なるほどな」 読み終えたエツィオは、手紙を細かく破り捨てると、鳩をそのまま空に放ち、マチルダの元へと送り返す。 「調べはついたか? 相棒」 「ああ、殺り方は決めた、後は待つだけだ」 広場の中央に備え付けられた処刑場を見下ろしながら、エツィオが言った。 鐘楼の天辺に止まっていた一羽の大鷲が、大きく翼を広げ、大空へと舞い上がった。 その日の夜……、スカボローの街は、明日行われる公開処刑を見物しようと、貴族、平民問わず、数多くの人間が集まってきていた。 通りや建物には様々な飾り付けがなされ、所々で花火の音がなっている。人々は街のお祭り騒ぎに浮かれ、酒を飲み、歌い、楽しんでいるようだ。 まるでカーニヴァルだ、と宿の一室から外を眺めながら、エツィオは呟いた。 「カーニヴァル?」 テーブルに付き、ワインを飲んでいた女のメイジが首を傾げた。マチルダである。 彼女は昼すぎにワルドと共にスカボローに到着し、エツィオと合流するためにここに来ていたのであった。 「ああ、俺のところのお祭りだよ、ヴェネツィアとか凄い賑やかなんだ」 エツィオはそう言うと、マチルダの向かいの席に腰かけ、ワインのグラスを傾ける。 「しかし、残党の公開処刑にしては、随分と派手にやってるみたいだな……何か他にあったのか?」 「ああ、あんたは知らないか。今日の昼すぎ、新政府の樹立が公布されたのよ。神聖アルビオン共和国が正式に建国したってわけ、だからこんなにお祭り騒ぎなのよ」 「なるほど。それで明日、王党派残党を全員処刑することで、国内の完全なる平定を誇示する、狙いはそんなとこか」 エツィオは納得したように頷いた。 「ワルドの様子は?」 「ワルドなら、今は迎賓館で祝賀パーティーってところかしらね、あんたの存在なんてこれっぽっちも考えちゃいないわよ」 「随分持て成されているようだな」 「今のあいつは『アルビオンの英雄』だからね、クロムウェルは、ワルドの事を国内の士気を高めるためのプロパガンダにしているみたいね」 「そうか……。そのパーティー、君は出席しなくてもいいのか?」 「ああいった席は、どうも好きになれなくてね……」 マチルダは、ほんの少し顔を曇らせると、グラスをテーブルに置いた。 「それで、あんたは大丈夫なの? 明日殺るんでしょ? ワルドを」 「ああ、全部考えてある、だけど、一つ問題がある」 「問題?」 首を傾げるマチルダに、エツィオは人差し指を立てた。 「クロムウェルだ、奴の操る虚無……。信じがたいが、死者を蘇らせるというのなら、ワルドの死体をそのままにしておくわけにはいかない」 エツィオのその言葉を聞いて、マチルダは納得したように頷く。 クロムウェルの虚無、死者を蘇らせる能力は確かに脅威である。ワルドはエツィオの立場を知る唯一の存在だ。 ワルドが蘇り、エツィオの情報がクロムウェルの耳に入ったら、それこそ厄介なことになりかねないのだ。 「なるほどね、それで私の出番ってわけね」 「そうだ、俺が暗殺に成功したら、奴の死体を処分してくれ、出来る限り速やかにだ。立場上、君が一番怪しまれずに奴の死体を処理できる」 「念には念を、か、わかったよ。……あんた、ワルドを消したら、次は私じゃないだろうね?」 あまりに抜け目のないエツィオに、マチルダは茶化す様に笑った。 するとエツィオは、口元にサディスティックな笑みを浮かべると、にっこりとほほ笑んだ。 「きみを殺すわけないじゃないか。それに、君は俺を裏切れないことを知っているしな、……そうだろ?」 「え、あ……う、うん……そう、だけど、さ……」 その言葉に、マチルダは急に顔を赤くすると、何やら恥ずかしそうにもじもじとしだした。 それから、バンっとテーブルを両手で叩きながら、勢いよく立ちあがる。 「と、とにかく! 今日はダメだからね!」 「おや? 何の話かな? 俺はまだ何も言っていないぞ?」 「え、あ、う……こ、この……!」 マチルダが羞恥で顔を真っ赤にしながら、ぎりぎりと口元を歪める。 あぁくそ、この女の敵め。絶対にあの子には会わせてなるものか。……万が一にでも会うようなことがあれば、その時は刺し違えてもこいつを殺してやる。 マチルダは心に固く誓いを立てながら、目の前の女たらしを睨みつけた。 「さて、冗談はここまでにして……」 エツィオは、急に真面目な表情を作ると、すっくと立ち上がった。窓辺に立ち、相も変わらずお祭り騒ぎの街を見渡す。 「明日、君は処刑場に?」 「あ、ああ、私も見物することになってるよ、これでもワルドの秘書官みたいな立場なんでね」 「そうか、それじゃ、事が済んだら鳩を飛ばしてくれ、俺は一旦スカボローから脱出する」 「わかった、その通りにするよ」 「……怪しまれるといけないな、君もそろそろ戻った方がいい」 「そうだね、それじゃ……」 マチルダは椅子から立ち上がると、グラスに注がれていたワインを飲み干した。 「面倒をかけて、すまないな」 「別にいいよ、あんたには危ないところを助けてもらったし……それに」 マチルダはそこで言葉を切ると、小さく笑う。 「あんたの方が連中より気前がいいからね、高く雇ってくれる方に肩入れするのは当然でしょう? 革命なんかに興味は無いしね」 「それもそうだな」 「だからちゃんとお金返してよ? あれには使い道がちゃんとあるんだから」 「承知してるさ。しかし、金の使い道か、一体何に……」 「ぜーったい! 教えない!」 マチルダは口を尖らせて言うと、フードを目深にかぶり、廊下へ続くドアに手をかけ、振り向いた。 「それじゃ、うまくやんなよ」 「ああ、君もな」 マチルダは後ろ手にドアを開けると、慎重に周囲を確認し、そそくさと部屋から出ると。迎賓館へと戻っていった。 「そろそろか……くそっ、見たかったなぁ……」 翌日……広場の外、怪しい人物がいないか警備に立っていた衛兵の一人が、つまらなそうに呟いていた。 昨日、エツィオに配置のメモをスリ取られた衛兵であった。 「ここで見張れって言われてもなぁ、もう怪しい奴なんているわけねぇだろうに……」 支給されたクロスボウをいじりながら、退屈そうに辺りを見渡す。 本来ならば広場に向かう人々の中に怪しい者がいないかどうか、常に目を光らせていないとならないのだが、どうにも退屈である。 今日は王党派の残党を一掃するための処刑が行われる日であって、もうアルビオン国内に王党派に属する人間などいない筈だ。 「あーあ……どっかに手柄がおっこちてねぇかな……ん?」 欠伸交じりに衛兵が呟いたそのときである。 ふと向けた視線の先、道行く人々の間を歩く、フードを目深に被った一人の男が目に入った。 一見すると貴族のようでもある、事実背中にはマントがかかっている。 おおかたこの処刑を見物に来たどこかの下級貴族か……、そんな事を考えながら、ぼんやりとその男を見ていると……、 男の背中にかかっていたマントがはらりと左肩に降りる、そのマントに施された意匠を見て、衛兵は思わず声をあげそうになった。 何かの見間違いではないかと思い、衛兵は目を凝らしてそのマントを見つめる、間違いない、あのマントは……! 「おい! そこのフードの男、ちょっと話がある! あっ、おい! 待て!」 衛兵がそう声をかけた時だった、男は道行く人々の間に紛れ、たちまち姿が見えなくなった。 まずい、俺の手柄が! 焦った衛兵は小走りで男のいた場所へと向かい、辺りを見渡す、あの男はどこだ? あいつを処刑台に突き出せば、ワルド子爵どころかクロムウェル皇帝閣下にすら気に入られて一気に士官になる事も夢ではない。 逸る気持ちを抑え、必死に男を探す、すると、十メイルほど先の道を歩いている男を見つけた。 クロスボウを引き抜き、男の元へと小走りで近寄ってゆく。 「くそっ、また消えやがった! あいつ……どこへ……!」 だが、衛兵が男の歩いていた場所に辿りついた時、男の姿は煙のように消えてしまっていた。 おかしい、俺はずっと奴を見ていたはずだ、なのにどうして見失ってしまったんだ? 己の不注意さに歯噛みしながら、まだ近くにいるかもしれないと、必死に周囲を見渡す。その時だった。 「……!!?」 不意に口を塞がれたと思うと、背中から腹部にかけ鋭い痛みが走る。 この世の物とは思えないほどの、身もだえするほどのおぞましい激痛、だが声を出すことができない。 脊椎を貫き、自分の鳩尾から飛び出した短剣を見ても、衛兵は自分の身に何が起こったのか理解することができなかった。 口を塞いでいた手がどけられ、背中から刃が引き抜かれる、それと同時に、急速に意識が遠のいてゆくのを感じる。 薄れゆく意識の中、彼が最後に見たものは、アルビオン王家のマントに身を包み、白のフードを目深に被った、死神の姿だった。 「眠れ、安らかに」 ベンチに腰かけた状態で絶命した衛兵の目を閉じながら、エツィオが小さく呟く。 一瞬のうちに行われた暗殺、倒れるよりも先にベンチに座らせられた事によって、 今の衛兵のその姿は、まるで疲れてベンチで居眠りしているように見える。 白昼に人が殺されたというのに、騒ぐ人間は誰もいないのは当然であった。 「……」 衛兵が取り落としたクロスボウを拾い上げ、背中に背負う。 左腕にかかったマントをまくり上げ、背中にかけると、エツィオは広場へと続く道を見つめた。 ごぉん……ごぉん……と、処刑を告げる鐘の音が、スカボローの街に響き渡る……。 処刑場には歓声と熱狂が渦巻いていた。吊るされたアルビオン王家の関係者、王党派に属し、戦い、捕らえられた哀れな貴族達。 それをみた市民達は、ある者は嘆き、ある者は興奮に歓喜し、ある者はただただ目の前で行われる殺戮に見入っていた。 最後の一組が、絞首台にかけられ、吊るされてゆく。処刑場が一際大きな歓声に包まれた。 そのときである、興奮に沸く処刑場に、長身の貴族が現れた。 羽根のついた帽子に、魔法衛士隊の制服。……ワルドであった。 ワルドは処刑場の中心に立つと、優雅に右手を掲げ、にっこりと笑った。 『革命戦争の英雄』の登場に、再び広場は、割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。 みな、『革命戦争の英雄』の勇ましい姿に興奮を隠せないようだ。 「親愛なる市民諸君! 今日はこの記念すべき日に、よくぞ集まってくれた!」 ワルドが声高に叫ぶと、集まった民衆、貴族達は一斉にワルドに注目し、演説に耳を傾けた。 そんなワルドの姿を正面に位置する教会の鐘楼から見下ろす、一つの影があった。 白を基調としたローブに目深に被ったフード、そして、血で赤黒く染まったアルビオン王家のマントに身を包んだ人物……、エツィオであった。 鐘楼の淵に立ったエツィオは、処刑台の上で拳を振いながら演説をするワルドを見つめながら、アサシンブレードを引き出した。 鐘楼の鐘が動き、正午を知らせる鐘の音が、広場に響き渡る。 鐘楼に止まっていた鳥達が、鐘の音に驚き、一斉に飛び立った。 鐘の音と共に、広場に降り立ったエツィオは、民衆に紛れ、興奮に沸く人々をかき分けながら、処刑台へとゆっくり近づいてゆく。 今では反逆者の証であるアルビオン王家のマント、だが、それを気に掛ける人物などどこにもいなかった。 人々はみな、ワルドに釘付けになっているし、民衆と完全に一つになり、存在が限りなく希薄になったエツィオを、衛兵達が見つけられる筈もない。 誰にも呼び止められる事もなく、エツィオは、一歩、また一歩と処刑台のワルドに向け、歩を進めていた。 ワルドは恍惚としていた、自分を恐れ敬う民衆の目に、自分を讃える人々の喝采に。 まさに人生の絶頂とも呼べる瞬間だった。いや、これからだ、これよりハルケギニアを一つにまとめ上げ、聖地を奪還するという使命が、自分には残っている。 自分の出番は、これから始まる。自分の絶頂は、ここから始まるのだ。 ワルドは、胸の底からわき上がる野望と期待に心を躍らせながら、熱弁をふるっていた。 そのときだった。 ふと目を向けた視線の先、集まった民衆の中に、目深にフードを被り見覚えのあるローブを纏った男が、ちらと視界に入った。 まさか……。ワルドは一瞬、心臓が縮みあがった。いや、そんな筈は無い、奴はトリステインに逃げ帰ったはずだ。 だが、それと確認する前に、ワルドはフードの男を見失ってしまった。 『どこまでもお前を追い、その喉を切り裂いてやる』 あの時にかけられた言葉が、ワルドの脳裏をよぎった。 どこだ、どこにいった、あのフードの男は。ワルドは目を皿のようにして民衆を睨みつける。その時だった。 「……ワルド殿? どうかなされましたか?」 横に控えた衛士の一人が、ワルドに話しかける。どうやら演説が途切れたことを不審に思ったようだ。 その声にワルドは、はっと我に返ると、一つ咳ばらいをした。 「い、いや……なんでもない」 ワルドは動揺を隠す様に、努めて冷静に振舞い、演説を再開する。 皇帝閣下直々の命令である、この公開処刑は必ず成功させねばならない。 そう思いながらも、ワルドの胸中には益々不安が広がってゆく。 まさか、あのアサシンがここにいるのか? 今この瞬間、観衆にまぎれ自分の首を掻っ切る瞬間を今か今かと狙っているのか? そう思うと、出来れば今すぐにでも、杖を引き抜き、呪文を唱え、迎撃する準備を整えたかった。しかし、それはできるはずもない。 今は公開処刑の最後を飾る、演説の真っ最中なのだ。 これを見ているのは何も市民だけではない、神聖アルビオン共和国の有力貴族もここにはいるのだ。そんな彼らの前で杖を引きぬける筈もない……。 そこまで考えた瞬間、ワルドははっとした表情になった、今この瞬間、自分は丸裸も同然と言うことに、ようやく気がついたのだ。 「あの……やはり御気分がすぐれないようですが……」 演説も支離滅裂、顔を真っ青にしたワルドに、心配したのか衛兵がもう一度話しかける。 だが、もうワルドの耳にそんな言葉は届かない。ワルドの目は、焦点を失ったかのように民衆の間を泳ぎ、何かを探している。 ただならぬワルドの様子は、見物していた市民達の間にも徐々に広がって行った。 何事かと、ざわつき始める民衆の中を、かき分けるようにエツィオはワルドの元へと近寄ってゆく。 先ほどエツィオは、わざとワルドの視界に入る様に移動していた。どうやら効果は覿面だったようだ。 疑心暗鬼にとらわれたワルドは、完全に錯乱状態に陥っていた、目は泳ぎ、まともに言葉すら発せてはいない。 エツィオは口元に笑みを浮かべると、サッシュベルトに下げた短剣に手をかける。 まだ遠い……もう少し、もっと近く。 「あっ!」 そのとき、ワルドの目が、驚愕に大きく見開かれる。エツィオの眼が鷹のように鋭くなる。 処刑台の上のワルドと目があった瞬間、エツィオはサッシュベルトに下げた短剣を逆手に引き抜きルーンの力を引き出す、 群衆を押しのけ、処刑台へ向けエツィオが駆けだした。 ワルドは、右手を大きく振い、民衆を押しのけ、こちらへ向かってくるフードの男を指さし。力の限り叫んだ。 「アサシンだ!! 奴を止めろ!!」 処刑場にワルドの叫び声が響きわたった。 突然の出来事に、一瞬呆けていた衛兵達が、民衆の中から飛び出してきたフードの男を見て、ようやく杖に手をかけた。 その瞬間、その衛兵が杖を引き抜くよりも早く、エツィオが背中のクロスボウを引き抜き、的確に衛兵の心臓を撃ち抜いた。 クロスボウで心臓を射抜かれなかったもう一人の衛兵は、エツィオに斬りかかることができたものの、 あっさり懐に潜り込まれ、今度は左手に隠し持った短剣で腹を抉られ、乱暴に押しのけられた。 一瞬で二人の衛士をなぎ倒したエツィオは、クロスボウを投げ捨てると、空中高く飛びあがり、遂にワルドに飛びかかる。 標的の命を刈り取るべく、高く振りあげられた左手から、アサシンブレードが飛びだした。 完全に不意を打たれたワルドの表情が驚愕と恐怖に歪む。だが、我に返ったワルドは腰の杖に手をかけ、口の中でルーンを詠唱する。 自身の二つ名、『閃光』の名に恥じぬ速度で詠唱を終え、杖を引き抜き、エツィオに向け振おうと試みる。 だが、その『閃光』も不意を打たれた今、全てが遅かった。 ガンダールヴの力を発揮した百戦錬磨のアサシンが、ワルドを遥かに凌駕した速度で襲いかかる。 そのまま馬乗りになる形で押し倒し、ワルドの首に、アサシンブレードを突き立てる。 幾多の標的を切り裂いた必殺の刃が、ワルドの頸椎を、命を、絶ち切った。 「出番は終わりだ」 「終わり……だと……! まだだ! まだ始まってすらいなかった! くそっ……! くそぉっ! アサシン……!」 「暗殺者が暗殺者を殺す、皮肉だな」 死に瀕したワルドは、目に憎悪の炎を灯しながら、エツィオを睨みつける。 だがエツィオはワルドとは対照的に、どこまでも冷たい目で見下ろしながら言った。 「何故裏切った」 「聖地のためだ! 他に何がある! 『レコン・キスタ』は聖地を奪還するために組織された、俺は聖地を望んだ、聖地に眠る虚無の力! 数多の命を操る、虚無の力だ! 素晴らしい機会だったというのに……!」 「国を、あの子を裏切ってでもか」 「あの子……? あぁ、ルイズか! はっ、はははっ! あんな小娘がなんだと言うのだ! アンリエッタもそうだ、世間を知らぬ愚か者だ、自分に酔うだけの阿呆に過ぎん。あんな国、仕えるに値するものか」 「彼女はまだ若い、それを支えてこそ、臣下という物ではないのか?」 「そんな悠長なことはもう言っていられん、トリステインは、ハルケギニアはあんな連中に治められているべきではないのだ!」 「では誰が治めるというのだ?」 「我々貴族だ! 我々選ばれし貴族による連盟、『レコン・キスタ』によってハルケギニアは統一され、忌々しいエルフどもより聖地は奪還されるのだ! 俺はその先駆けとなる! なるはずだった……! なのに!」 ワルドはそう言うと、震える手で喉に手を当てる。 エツィオに貫かれた傷口から、ごぼりと鮮血があふれ出た。 「くそっ! 嫌だ……! 嫌だ! こんな! こんな死に方っ……!」 ワルドは目を見開くと、エツィオの肩を掴んだ。 まるで生にしがみつこうとするかのように、その手に力がこもる。 だがエツィオは、優しくその手を取ると、諭す様にワルドに話しかけた。 「代価を払う時が来たのだ、裏切りの代償は安くは無いぞ」 「俺はっ! 俺はっ……! 聖地に行かなくてはならないんだ……! それが俺の義務なんだ! それがっ……母を……!」 震える手で、首につけたペンダントを握り締める、その先についたロケットを開ける。ワルドの目から、大粒の涙がこぼれる、 ロケットの中を見つめ、誰にも聞こえないような小さな声で呟く。 くっ、と喉から小さく声が漏れたかと思うと、腕が力を失って床の上に落ちた。 「死が、汝を妄執から絶ち切らんことを。――眠れ、安らかに」 ――からん……。と、ワルドの手に握られていた杖が、乾いた音を立てながら、処刑台の上を転がってゆく。 覚悟を決める間もなく、祈りの言葉を口にすることもできず、ただ唐突に、一瞬にして訪れた死。 驚愕と恐怖に見開かれたままのワルドの瞼を、エツィオが手をかざし、優しく閉じる。 そうすることによって現れたワルドの表情は、死んでいるとは思えないほど穏やかなものであった。 正午を知らせる鐘楼の鐘が、六つ目の鐘を打ち鳴らしたその時、突然の出来事に呆然としていた民衆から、大きな悲鳴が上がった。 エツィオが振り返ると、異変に気がついた衛兵達が殺到してくるのが見えた。 「うぉおおおおお!」 雄叫びと共に一人の衛兵が剣を振りあげ斬りかかる、だが、エツィオはすぐさま処刑台から飛び降り、広場から一目散に逃走を開始した。 道行く人々をかき分け、道端に積み上げられた木箱や樽を踏み台に、壁から突き出た梁に飛び乗り、看板を足場に屋根の上へと華麗に上る。 そのあまりにも機敏で身軽な身のこなしに衛兵たちは、一瞬呆気にとられる。 だが、見惚れている場合ではない。ある者は必死に壁をよじ登り、またある者は路地から屋根の上を見上げながら、 そしてメイジであるものは、フライを使い、逃走するアサシンを追いかけた。 やがて、屋根の上を走っていたアサシンが、不意に、屋根の上から飛び降りる、 先回りし、来るアサシンを待ちかまえていた兵士を踏みつけるように着地して、衝撃を和らげる。 そして、すぐに立ち上がると、一件の教会の扉の前で立ち止まった。 剣や杖を構えた衛兵の一団はじりじりとアサシンを取り囲み、警戒する。 「ふん、そこに逃げ込もうとしたが、当てが外れたってところか? 観念するんだな!」 衛兵の一人が、そう言った時だった。 ごぉん……と、正午を告げる最後の鐘の音が、スカボローの街に響き渡る。 扉の方を向いていたアサシンが、フードの下に笑みを浮かべながら、ゆっくりと振り返る。すると、後ろの教会の扉が不意に開かれる。 そして、中から礼拝を終えた神学者や市民達が帰途へつくべくぞろぞろと外へと出てきた。 するとどうだろう、目の前にいた筈のアサシンの姿が、教会の中から現われた神学者達や市民に紛れ、溶け込むように消えてしまったのである。 「なっ……なんだとっ!?」 衛兵は驚いた声を挙げると、アサシンを探し出すべく、その人々の群れを呼びとめる。 だが、神学者達は全員白いローブを纏い、フードを目深に被っているため、誰が誰だかさっぱり見当がつかない。 「ぜ、全員動くな!」 「お、おい! 貴様! 顔を見せろ!」 「なっ、なんでしょうか……?」 「くそっ! こいつじゃない!」 神学者の一人を捕まえ、顔を確かめる、しかし、あのアサシンも目深にフードを被っていたのだ、顔などわかるはずもなかった。 「ディティクトマジックだ! 奴を探し出せ!」 「は、反応なしだと! 馬鹿なっ……! 奴は平民だとでも言うのか!」 「くっ……くそっ! どこだ! どこにいる! アサシン!!」 完全にアサシンを見失った衛兵達の叫び声が、スカボローの街に響き渡る。 騒然とする街の空に、一羽の大鷲が舞い上がる。 大鷲は一声、甲高い声で啼くと、大空へと飛び去って行った。 前ページ次ページSERVANT S CREED 0 ―Lost sequence―
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浮遊大陸アルビオンの首都ロンディニム。その郊外にはかつて軍港と呼ばれたロサイスと言う港がある。 この港が軍港では無くなった日から、港の中心に一つの銅像が建てられていた。 「ママ、あれなあに?」 一人の子供が銅像を指差しながら母親に尋ねた。 「あれはね、皆を守ってくれた天使さまなのよ」 母親は笑いながら子供に答えた。 『彼』は、後に虚無のルイズと呼ばれる少女に召喚された。 そして後世において彼は始祖ブリミルが遣わした天使と呼ばれ、平和の象徴とされた。 「でもてんしさまなのにはねがないよ?」 その銅像は人では無く、丸っこい変な物体を象っていた。確かに、子供で無くてもこの奇妙なオブジェを見掛けたら首をかしげるだろう。 「そうね。不思議な姿をしているわね」 『彼』は何とも形容し難い姿をしていて、全身は金属で作られていた。 誰もが変人の作った彫刻だと判断したが、『彼』は自分の意思を持ち、不思議な足で自由に移動することもできた。 「ママ、てんしさまがけがしてるよ? なおしてあげないの?」 銅像の天辺には大きな傷がついていた。そのせいで、ただでさえおかしな姿をしている銅像はより変なものに見えた。 「違うのよ。天使さまは怪我をしているんじゃなくてああいう姿をしているの」 『彼』は全身の至るところに傷がついており、頭と思われる場所には亀裂すら走っていた。誰もが珍妙な粗大ゴミとしか思わなかった。 しかし不思議なことに、『彼』の身体は今まで存在していなかった不思議な金属で作られており、誰も『彼』を傷つけることはできなかった。 「ママ、てんしさまよごれてるのにきれいにしちゃダメなの?」 その銅像には幾つかの汚れがついていた。汚い と呼ぶほどのものでは無いがお世辞にも綺麗とは言えなかった。 「あれはね、天使さまがご主人さまを守った証なの。だから綺麗にしちゃダメなのよ」 『彼』は争いごとを好まなかった。忌み嫌っていたと呼んでも良いだろう。 その為、『彼』が誰かを傷つけることは無かった。いつも厄介事に首をつっこみたがる主を庇うだけで、決して反撃することは無かった。 「ママ、なんでてんしさまはここにいるの?」 「それはね、天使さまがこの街を守ってくれたからなのよ」 それまでに何があったのか。それを語ったところで事実が覆ることは無い。 ならば事実だけを語ろう。 ロサイスの港にアルビオンの軍勢七万騎が迫っていた。 このような事態を想定していなかったトリスティン軍は混乱を極め、主力部隊をどうやって撤退させるかしか考えられなかった。 そして出た結論は時間が足りないと言うことだった。このまま戦っては数の差で確実に負け、撤退するにも時間が足りず主力の大部分は犠牲となる。 その為、首脳部は主力部隊の撤退が完了する時間――約一日分――を稼ぐため、ルイズ一人に七万の軍勢を足止めするように命じた。 撤退も降服も負けることさえ許さず、たった一人の少女を生贄に捧げることにした。 もちろん、通常ならば考えられないことだ。たった一人では足止めなどできる筈が無い。 七万と言う大波に呑まれ、蹂躙され、何事も無かったかのようにアルビオン軍は進軍を続けるだけだ。 しかし彼女の持つ魔法が、虚無と言う他を遥かに圧倒する力が、首脳部の言い訳に使われた。 その命令を下されたルイズは無表情のまま時を過ごした。ただ、『彼』をどうやってこの街から逃がすかを考えていた。 最初は知り合いのメイドに預けようとした。そうすればメイドが逃げる時間さえ稼げれば『彼』を救うことができる。 数々の危機から自分を守ってくれた『彼』を、初めて守ることができる。そう、思った。 しかし不運なことにメイドを見つけることができなかった。『彼』もロサイスの街に残してしまうことになった。 次にルイズは『彼』に一つの命令を下した。トリスティンの友軍が戻ってくるまで身動き一つせず、変な形をした鉄塊でいろと命令した。 どこかの土のメイジが気まぐれで作った鉄塊。そんなものを破壊するほどアルビオンの兵も酔狂では無いだろう。 『彼』は確かにその命令を聞いた。ルイズは『彼』が助かることに安堵した途端に倒れ、眠ってしまった。 数々の心労が、彼女を蝕んだのだろう。 しかしルイズが目を覚ました時、それは彼女が死地へ赴く時であった。 『彼』は初めて主の命を破り、ロサイスの街を抜けだした。 「なんだ、こりゃ」 『彼』は主に代わり、ただ一人だけでアルビオン軍と対峙していた。 アルビオンの斥候も変な鉄塊が本隊に接近していることに疑問を抱いたが、おかしなゴーレムかガーゴイルだと判断した。 当然、そんな物の為に進軍を止める筈が無く、七万の大波が彼を呑み込もうとした。 その時、彼はアルビオン軍の誰も聞いたことが無い、無機質な声を上げた。 「私ノ命ハ」 アルビオン軍にとってガーゴイルは喋ったことなどどうでも良いことだった。 そんなことより、ロサイスの街を蹂躙することの方が大事だった。 「平和ノタメノ礎トナロウ」 翌朝、目覚めたルイズは『彼』がどこにもいないことに気がついた。 ルイズはアルビオン軍の存在を忘れ『彼』を探したが、街のどこにも『彼』の姿は無かった。 そしてアルビオン軍のことを思い出した。街にいない『彼』と街に来ない軍の存在を結びつけたルイズは街を飛び出した。 そこにあったのは夥しい数の肉片と血の海だった。 この世の全ての命が奪われたような錯覚を覚えたルイズは、途中で何度も吐き気を催しながらも『彼』を探し続けた。 そして頭上に太陽が昇り、血の臭いに何も感じ無くなったころ、ルイズはようやく『彼』を見つけることができた。 『彼』の身体はバラバラになっていた。スクウェアスペルを食らっても傷一つ付かない筈の身体が、それでも七万もの数を防ぎきることができず、頭部だけを残して完全に壊されてしまっていた。 「…………なんでよ……」 『彼』の頭部を見つけてから数分経ち、ルイズはその一言をようやく腹の底から絞りだすことができた。 そしてその声に反応したのか、『彼』の顔面に小さな光が点った。 「私ノ、役、 メハ 終エマシ、 タ」 『彼』の声は途切れ途切れになり、更に雑音まで混じっていた。とても声には聞こえない、耳触りな音だった。 しかしルイズは彼の声を一語一句を違えること無く聞きとった。そして、彼との別れを理解した。 「何、言ってる のよ、 あん たは、わたしの使い 魔、なのよ」 ルイズは『彼』の頭部を胸に抱えながら叫んだ。『彼』との別れを否定するため、全身全霊を上げて。 もはやそれは声では無かった。『彼』と同じ、雑音にしか聞こえないものだった。 「世界ハ平和、 モウ、誰モ キズツカナイ世界…」 『彼』の声を聞きながらルイズは泣いていた。でも、声をあげることはしなかった。 もうこれが最後だから、『彼』の最後の言葉を聞き逃さないため、必死に自分の声を抑えた。 「…… …ヨカッ」 そして『彼』に点っていた最後の光が消えた。最後の言葉を言いきれずに。 それからルイズは泣き続けた。声にならない叫びをあげながら。 ようやく泣き止んだ頃には、日はすっかりと傾いていた。 「……帰りましょう」 泣き止んだルイズは、『彼』の頭部を抱えながら呟いた。 喉はすっかり枯れていたが、彼女を知る誰もが知らないような優しい声だった。 「あんたは、平和の英雄なんだから……」 その後、ルイズは仲間たちと共に戦い、終にはハルケギニアに平和をもたらした。 それからの世界は平和そのものだった。ロサイスに銅像が建てられ、平和の象徴と呼ばれている『彼』もきっと喜んでいるだろう。 そして、見守り、支え続けているだろう。 この世界の平和を、ずっと……遥か未来まで―― コズミックブレイク「平和のスクラップ」より、キャノンボールを召喚
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クラブ名:ボローニャFC Bologna Football Club 1909 ホームタウン:ボローニャ スタジアム:スタディオ・レナート・ダッラーラ(38,279人) オフィシャルサイト:http //www.bolognafc.it/ Ps 11-12 12 名前 GK 1 1 ジレ GK 25 25 アリアルディ GK 32 32 ストヤノヴィッチ GK 44 44 ロンバルディ DF 3 3 モルレオ DF 5 5 アントンソン DF 8 8 ガリッチュ DF 19 19 ヴィターレ DF 21 21 ケルビン DF 22 22 リックレル DF 51 51 ロリア DF 75 75 ホセ アンヘル クレスポ DF 84 84 ラッジ DF 90 90 ポルタノーヴァ DF -+ 43 F. セーレンセン ←ユヴェントス(ITA) DF -+ 48 ルビン ←トリノ(ITA)←パルマ(ITA) DF + ナターリ ←フィオレンティーナ(IAT) DF -+ マルコ モッタ ←カターニャ(ITA)←ユヴェントス(ITA) MF 4 4 クルヒン MF 6 6 タイデル MF 13 13 プルゼッティ MF 15 15 ディエゴ ペレス MF 16 16 カザリーニ MF 26 26 -- ムンディガイ →インテル(ITA) MF 33 33 パナギオティス コネ FW 9 9 - ディ ヴァイオ →モントリオール インパクト(USA) FW 10 10 - ガストン ラミレス →サウサンプトン(ENG) FW 11 -- ガビラン →ピアチェンツァ(ITA) FW 17 17 ヴァンタッジャート FW 20 -- フェデリコ ロドリゲス →ピアチェンツァ(ITA) FW 23 23 ディアマンティ FW 35 35 パポーニ FW 52 -- パージ →FCキアッソ(SUI) FW 77 77 ヘンリー ヒメネス FW 88 -- コーダ →シラクサ(ITA) FW 99 99 アックアフレスカ FW -+ 78 ベルフォディル ←リヨン(FRA) FW -+ ジラルディーノ ←ジェノア(ITA) ←フィオレンティーナ(ITA)
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___ ////////,\ / //////////∧ フン…流石にもう大臣も油断しただろう! |//// ┼┼////| ∨//// ノ////,/ /\ 今日こそ城を抜け出してこの手で魔王軍を討つぞ!!! _⊂ニニ`ー-====ニニニ三´ ̄\//////// ̄. ` ー - ◇ \  ̄ ̄⊂´//._,,___'////////////////ボ/////////////へ ◇ \ \ ` ̄  ̄ ̄ ̄ ̄.ヽ////// ロ/////, -‐-== ///,へ_◇ \ ` 、 !//////|///// ` ///ヽ◇ \ ` 、 !////////////| / {ヽ// / \/ ‐- __ !////////////i _, ´ `  ̄  ̄}777777777777{ ̄ / ////////////i、 ./ //////////////\ ./ ///////`''=,, /////\ / ////// ''=,,/////,\ /'///// ヽ///// ヤ /'//// ヤ/////} 名前 サボロー 原作 企業・ご当地キャラクター 出演物語数 4 リュウセイは勇者バトルに参加するようです 脇役、魔王の手先として登場 +ネタバレ注意 天野河リュウセイを洗脳し、女装ナンパをさせた。 洗脳に気づいたリュウセイとの戦いも勝ったが、 駆けつけた渡良瀬準に倒された。 サボって!サボロー王! 主人公、メーコーの王様『サボロー・ギジュク』という名で登場 勇者に代わって自分が魔王討伐に行こうと躍起になっていた +ネタバレ注意 ネタバレはここに書く ヒルダは黄金の宝島を攻略するようです 欲深い村人 +ネタバレ注意 ヒルダとほたるから宝を横取りするために、後をつけていたが、 気付いていた2人の奇襲で倒されたが、命は助かり、帰り際に村に送られた。 ダンジョンマスターメーカー 冒険者として登場 【ジョブ:テレポーター】 +ネタバレ注意 ネタバレはここに書く
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「クロサイエッジ!」 【名前】 クロサイエッジ 【読み方】 くろさいえっじ 【登場作品】 劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア 【分類】 必殺技 【使用者】 仮面ライダーダイモン 【詳細】 仮面ライダーダイモンの必殺技。 キメラドライバーのスロットに装着したトライキメラバイスタンプを3回動かし発動。 バイスタンプが宿すクロサイの力を顕現し、クロサイのエネルギーを蓄積した強力なパンチを相手へと繰り出す。
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前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 始祖ブリミル降臨暦6242年、年末はウィンの月、第一週マンの曜日、軍港ラ・ロシェールにて。 遂にトリステイン・ゲルマニア連合軍は、史上稀に見る大艦隊に乗り込み、アルビオン侵攻を開始した。 出征を前に、両国の首脳と司令官から手短に演説と激励がある。 まずは、トリステインの女王アンリエッタ。喪服を纏い、傍らにはウェールズ皇太子の棺を置いている。 「……この大戦は、ただの戦にあらず! 卑劣なる『国王殺し』クロムウェルの政権を倒し、 ウェールズ皇太子のご遺体を祖廟にお帰しして、アルビオン六千年の王統を弔うための戦い! また、ここにおられるブラウナウ伯爵は、ゲルマニアの貴族にして、教皇聖下の側近でもあられる方。 彼が参戦するという事は、ロマリア皇国もその聖なる権威を持って、 アルビオンの邪悪な簒奪者どもを討伐する意思を示したという事です!」 女王の紹介に、ブラウナウ伯爵が敬礼する。 「で、あるならば! 我らはハルケギニア大陸を共和制の暴風から守り、 始祖ブリミルの定めたもうた、聖なる共同体の秩序を防衛する『神の盾』であります! おお、勇士諸君よ! 諸君に神と始祖ブリミルのご加護、豊かにあれ!!」 「「AMEN!! AMEN!!」」 烏合の衆であった6万の大軍は、聖なる使命に気を引き締め、戦意を高める。 続いてゲルマニア皇帝アルブレヒト三世、マザリーニ枢機卿、ド・ポワチエ将軍、ハルデンベルグ侯爵の訓辞。 一応ガリア以外の諸国が参戦しているが、主導はやはり『聖女の王国』トリステイン。 となれば、これは『白の国』アルビオンを、トリステインの青地の旗で染め替える戦争でもあるのだった。 「では諸君、我らも行こう、雲の上なるアルビオンへ! かの地に真の『千年王国』を築き、万民を救済する計画のために!!」 「「AMEN!! AMEN!!」」 松下率いる『千年王国教団』の精鋭も、メシアに鼓舞されて出征する。 かくして、ここにトリステイン・アルビオン大戦の第二幕は上がったのであった。 ラ・ロシェールの『世界樹桟橋』から、総数500隻を超える大艦隊が浮かび上がる。 戦争終結はアルビオン全土の制圧まで。その間、ラ・ロシェールとタルブが後方支援を行う。 両国の首脳陣は、出征を見送ると、各々の首都へ帰っていった。ウェールズの棺も一旦トリスタニアに戻る。 さて、松下とルイズは自前のフネから、旗艦たる竜母艦(空母)『ヴュセンタール』へ移る。 トリステインの切り札『東方の神童』及び『虚無の担い手』として、軍議に参加するのだ。 甲板士官のクリューズレイが出迎え、狭い艦内の奥にある会議室に案内する。 一番上座に座るのは、四十過ぎの美髯の将軍。 「ようこそ、お二方。我が軍の旗艦『ヴュセンタール』へ! ご活躍は聞き及んでおりますぞ。 改めまして、総司令官のオリビエ・ド・ポワチエです。今後ともよろしく。 こちらは参謀総長のウィンプフェンに、空軍指揮官のラ・ラメー伯爵。 それにゲルマニア軍司令官の、ハルデンベルグ侯爵です。他、多数の将軍・参謀らが集っています。 教導士官のボーウッド卿は、ただいま艦隊の視察に当たっておられます。ブラウナウ伯爵も一緒だそうで」 「よろしく、諸君」 「よ、よろしくお願いします」 「はは、まあ楽にして、お座り下さい。ミスタ・マツシタにミス・《虚無(ゼロ)》」 「ミス・ルイズ・フランソワーズと呼んであげて下さい。彼女を兵器扱いしてはいけない」 「いや、これは失敬。ミス・ルイズ・フランソワーズ、お許しを。 ……では、ひとまず軍議を始めてしまいましょうか。議題はこれですな」 皺の深い小男、ウィンプフェン参謀総長が司会役となり、配られた資料を読み上げる。 「ええ、アルビオンまではラ・ロシェール空港からフネで約半日、大艦隊ですのでまあ、夜半には着きます。 そこで上陸作戦を敢行するわけですが、目的地となる大型の軍港は二つ。 アルビオン最大の軍港ロサイス、これは大陸の南部にございます。地図ではここですな。 もう一つ、この規模の大艦隊が上陸できるだけの空港となりますと、やや遠回りして、 北部にあるこのダータルネス港しかありません。スカボローは狭すぎます」 アルビオン大陸の、長方形の地図をウィンプフェンが指差す。南北600リーグ、東西は120リーグほどか。 「最短距離でなら、ロサイスを正面から強襲するのが早かろうが」 「敵もそれなりの準備をしておりましょう、こちらの被害も大きくなりますぞ。 長途来た我々には、補給線を確保するとともに、首都ロンディニウムに着くまで軍の消耗を抑える必要もあります」 「風石にも、火薬にも限りがある。二分して一方をダータルネスに向かわせ、そちらに敵をひきつけている隙にだな」 「その囮は、当然トリステインがやるのでしょうな?」 「何ィ? 共同作戦に決まっとろうが、侯爵」 「トリステインとゲルマニアでは、話す言葉も指揮系統も大いに違いますものでなァ」 なんと、連合軍は未だに上陸地すら決まっていなかった。 ラ・ヴァリエールとツェルプストーの争いに代表されるように、始祖以来続くトリステインと新興国ゲルマニアは、 本来は水と油、いや『水と火』の関係なのだった。よく連合軍などできたものだ。 どうやら上陸作戦の障害は、いまだ有力なアルビオン艦隊に対する錬度の高くない自軍、 そしてダータルネスへ敵を吸引する欺瞞作戦の不備、の二点であるようだ。 松下とルイズは口を閉ざし、両国将軍達の論争を呆れ顔で見ている。なんとも凡将揃いの大軍なのであった。 と、そこへカンカンカンカンという警鐘の音が鳴り響く。伝令兵が会議室に走りこんできた。 「敵襲! 敵襲です!!」 「なんと、もう迎撃に来おったか。空中で艦隊を待機させていたか?」 「い、いえ将軍、襲ってきたのは人間ではありません!!」 「あァ?! 野良竜でも出たか?」 「いいえ、『悪魔』です」 ぐにゃり、と伝令兵の顔が醜悪に歪み、背中から大きな黒い皮翼が生える。 尻からは長い蛇のような尻尾が伸び、口から炎の玉が吐き出された! 「うおっ!?」 「閣下、危ないっ!」 士官が咄嗟に『水の槌』を放ち、ド・ポワチエを狙った炎を掻き消す。 「ケケケ、命拾いしたな。けどよ、もうこのフネは俺たちのものさ!」 「こいつは……ダンテの地獄第八圏第五濠『汚職収賄の濠』に棲む、低級鬼神のマラコーダ(邪悪な尻尾)か。 俺たち、ということは、他のマレブランケ(悪しき爪)の連中も来たのか?」 「そーだよぉ、『東方の神童』さまぁ!! バルバリッチャにカニャッツォ、 スカルミリオーネにカルカブリーナ、ついでに阿呆のルビカンテ! その他もろもろ、愉快な仲魔が勢揃いさ!」 マラコーダは、ぶばっと黒い屁をこくと、その煙に紛れて姿を消す。 甲板に飛び出すと、雲霞のような悪鬼(デーモン)の大群が、このフネに飛び降りてくるではないか! 彼らは地獄の獄卒マレブランケと、空中に潜む妖怪グレムリンだ。 一体一体はせいぜいオーク鬼程度の強さだが、数が尋常ではない。フネは大混乱に陥る。 「ここが旗艦だ、こっちに来い! よォし、てめえら地獄の悪鬼よ、人間どもをぶっ殺せ!」 「ひひひ、いざ、奴らをイナゴのように食い荒らしちまえっ!」 《朝になると、東風がイナゴの大群を運んで来た。イナゴは、エジプト全土を襲い、エジプトの領土全体にとどまった。 このようにおびただしいイナゴの大群は前にも後にもなかった。イナゴが地の面をすべて覆ったので、地は暗くなった。 イナゴは地のあらゆる草、雹の害を免れた木の実をすべて食い尽くしたので、木であれ、野の草であれ、 エジプト全土のどこにも緑のものは何一つ残らなかった》 (『モーセの十災・イナゴの災い』:旧約聖書『出エジプト記』より) 《噛み付くイナゴが残した物は、移動するイナゴが食らい、移動するイナゴが残した物は、若いイナゴが食らい、 若いイナゴが残した物は、食い荒らすイナゴが食らった》 (旧約聖書『ヨエル書』第一章より) 空中で悪鬼の指揮を取っているのは、ベリアル配下の小悪魔・こうもり猫とマラコーダだ。 グレムリンは兵士や竜に取り憑き、火薬を暴発させ、フネの操縦を誤らせる。 マレブランケは大きなフォークを振り回し、兵士を突き刺し、掬い上げては甲板の外へ放り投げる。 空賊よりタチが悪い。哄笑と羽音と断末魔が響き渡る。 「な、なんだ、これは!?」 「アルビオンが操る『悪魔』、いや『悪鬼』どもです。 なるほど、渡ってくる途中で叩けば、にっちもさっちも行きませんな」 「感心せんでいい! な、なんとかしたまえ! きみも『悪魔使い』だろう!」 「そうですな。ルイズ、きみの持っているバッグの中に、小さな金属の壷がある。それを出してくれないか」 「ご主人様に命令するなっ! ……こ、これね」 「命令ではない、依頼だ。では、ぼくはこの網を取り出して、と」 松下は、魔法のかけられた投網を取り出し、呪文とともに天へ投げ上げる。 すると網はパアッと広がり、フネ全体を包み込んだ。 再び呪文を唱えると、悪鬼だけが網にかかり、その網が見る見る縮んでいく。 遂に網は何百という悪鬼ごと、金属の壷に吸い込まれてしまった。松下はきゅっと壷に蓋をする。 「これでよし、と。天網恢恢、疎にしてなんとやらだ。残りの掃討は竜騎士に任せよう。 さ、方々、軍議を続けましょうか……」 「「は、はい! マツシタ伯爵!!」」 《(イエスは)シモンに「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」と言われた。 シモンは「先生、私たちは夜通し苦労しましたが、何もとれませんでした。 しかし、お言葉ですから、網を降ろしてみましょう」と答えた。 漁師たちがそのとおりにすると、おびただしい魚がかかり、網が破れそうになった。 …(彼らは)二艘の舟を魚でいっぱいにしたので、舟は沈みそうになった。 …すると、イエスはシモンに言われた。「恐れることはない。今から後、あなたは人間をとる漁師になる」 そこで、彼らは舟を陸に引き上げ、すべてを捨ててイエスに従った》 (『シモン・ペテロの弟子入り』:新約聖書『ルカによる福音書』第五章より) 結局、連合軍の上陸作戦は次のようなものとなった。 連合軍の主力は、このままロサイスへ向かう。ただし、ゆっくりと。 一方ダータルネスへは、松下とルイズと『千年王国教団』の兵が向かう。 そして、『虚無の魔法』で敵軍の増援をダータルネスへ引き付けておき、油断したロサイスを叩く。 紛糾の末の、ベターな作戦であった。ルイズの提案という点を除けば。 「まさか、きみが作戦を立案するとはな。しかも、それが通るとは」 「あんたばっかりに活躍させないわよ。私だって『虚無の担い手』なんだし。 この『水のルビー』の指輪を嵌めて『始祖の祈祷書』をめくったら、いい呪文が浮かんだのよ」 『虚無の魔法』か。松下には『祈祷書』を読めないが、今ルイズが使えるのは、爆発と解呪だけのはず。 ……いや、タルブでは松下と同一の呪文を唱え、協力して『地獄の門』を開けたのだった。 「……そういえばエロイムエッサイムとか、タルブでの戦いの時の呪文や、 ラグドリアン湖での『ヘカス・ヘカス・エステべべロイ』はこちらのルーンではないぞ。 『東方』のヘブライ語やギリシア語、あるいは古代エジプト語でも書いてあるのか?」 「知らないわよ、そんなの。あんたを召喚したときは、以前読んだ魔法書にそういう呪文があったから、 必死に唱えてみただけだし。『祈祷書』に浮かぶのは確かにこう、こんな文字だった気はするけど、 呪文は直接頭の中に響いてくるの」 ルイズは、メモ帳代わりの羊皮紙にさらさらと文字を書く。 ……これは、『エノク語』だ。16世紀末に英国の神秘主義者ジョン・ディーが発明したとされる、 架空のオカルト文字だ。始祖ブリミルとは、一体……? 「それに、呪文を唱える前のトランス状態の時、こんな言葉も聞こえたの……」 《我は始祖、ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ。 我が知りおきし真理をこの書に記す。資格なき者はその真理を知ることあたわず。 この世の全ての物質は、小さな粒より成る。四大系統はその小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめるなり。 神が我に授けたまいしは、さらなる小さな粒に干渉し、影響を与え、かつ変化せしむる力なり。 四にあらざれば、これを『零(ゼロ)』、すなわち『虚無』と名づく。 これを読みし者は、我の行いと理想と目標とを受け継ぐ者なり。またそのための力を担いし者なり。 志半ばで倒れし我とその同胞のため、異教に奪われし『聖地』を取り戻すべく努力せよ。 虚無は強力にして詠唱は長きにわたり、時として命を削る。汝、心せよ……》 「……ってね。我ながらよく覚えているものだわ、『虚無の担い手』だからかしら」 「……ふぅむ……」 ともあれ、わずか3隻の『千年王国艦隊』は、夜陰に乗じて北のダータルネスへ急ぐ。 しかし、敵も簡単にはアルビオンへ近付かせない。 「おおっ、メシア! 敵の警戒線に接触し、哨戒カラスが我々を発見した模様! 竜騎士がやってきます!」 「よし、『魔女のホウキ』部隊出撃だ! 竜の翼を狙い、撃ち落せ。日ごろの訓練の成果を見せろ! ただし、なるべく生き残ることを優先しろ。ルイズとぼくは一番早い風竜でダータルネスに急行する!」 「了解!!」 ホウキ部隊が手に手に杖や銃を構え、竜騎士と戦う。小さな艦隊からも砲撃が始まった。 ダータルネスまで、距離にして数百リーグ。そこへ到達できるのは二人だけでよく、あとは援護に回る。 快速船で飛ばしても片道丸二日以上はかかるところを、数時間でぶっ飛ばす。 風竜の能力を最大限まで引き出す、『神の右手』ヴィンダールヴだからこそ出来る芸当であった。 やがて、眼下にダータルネス空港が見えてきた。 ルイズは防寒具にくるまり、呪文を呟きながらトランス状態に入っている。松下は、それを無言で見守る。 ブリミル。ぼくの記憶が正しければ、北欧神話の原初の巨人ユミルの別名の一つだ。 まさかその本人ではあるまいが、ルーンだの世界樹だの、この世界には北欧神話と似たような要素が多い。 なぜ、エノク語? 物質の小さな粒とは、原子か素粒子か? そういえば、この世の初めは大きさが『ゼロ』にほぼ等しい極微粒子で、そこからビッグバンが……。 「アパラチャノ・モゲータ!! 実質に等しき大いなる幻よ、この空間に漂うべし! 虚無の魔法の初歩の初歩、『幻影』!!」 ルイズの叫びとともに、空間の『極微の粒』がゆらぎ、白い雲の中から巨大な幻影が現れる。 先ほどまでいた、60隻の連合艦隊の立体映像だ。 「おおっ」 これには松下も驚いた。圧倒的な迫力で、本物と見分けがつかないではないか! 「よし、この幻影に紛れて、全速力で離脱する!」 だが、ダータルネスを防衛する竜騎士たちは、風竜に跨ってぐんぐん近付いてくる。 「マツシタ! このままでは、追いつかれるわ!」 「ならば、この壷を使ってしまおう。トペ・エト・ラリリ、トロトペ、タッ!」 松下が先ほどの壷に呪文を呟き、蓋を開くと、雲霞のような悪鬼どもが出てくる。 その目は虚ろで、足には例の網の糸が絡みつき、敵と味方の判断もつかない。相討ちになり、次々と墜落する。 悪鬼どもが竜騎士を足止めしているうちに、松下たちは離脱に成功した。 「これで、アルビオン軍が騙されてくれるといいのだがな」 「はああ、疲れたわ。早く戻りましょう、マツシタ」 その頃ロサイスでは、敵の守備艦隊と連合軍主力による砲撃戦が始まっていた。 轟音、雷火! 木片と肉片が飛び散り、フネ同士が激突して軋む。焼き討ち船が突撃し、爆発する。 アルビオンは三列縦隊を組んで善戦するが、包囲陣を突破するには、やや戦力差がある。 「よおし、我がゲルマニアの誇る火砲の威力、思い知るがよい!!」 興奮するハルデンベルグ侯爵。一斉に連合艦隊の大砲が炸裂し、囲まれていた敵艦が轟沈する。 「わはははは、やはり戦場はいいのう! この轟音、硝煙と血肉の香り、たまらんわい! そおれ敵の空兵ども、総員玉砕せいっ!! わははははは」 その隣に、すっと小柄な黒髪の男が立つ。 「では、私も砲火をお目にかけましょう。火の国ゲルマニアとロマリアの同盟、成れり! 『ヒンデンブルグ』号、空対空ミサイル『サイドワインダー』発射!!」 「「了解! 『サイドワインダー』、発射!!」」 ちょび髭のゲルマニア貴族、アドルフ・ヒードラー・フォン・ブラウナウ伯爵の命令の下、 彼の率いる軍団のフネ『ヒンデンブルグ』から、細長い円柱状のものが何本も射出される。 それらは逃げ回る竜騎兵やフネを蛇行しながら追いかけ、至近距離で爆発した! 「お、おお伯爵、アレは?」 「我々『薔薇十字団』の最新技術で作られた、特殊飛行兵器『サイドワインダー』です。 まぁ、火薬の詰まった巨大な鉄の火矢を撃ち出すようなものですな。 先端部に魔法技術を使用しておりまして、動き回る標的にも確実に命中いたしますぞ」 「おほっ、また当たりよった! 素晴らしい!」 侯爵は、玩具を見た子供のようにはしゃぐ。ブラウナウ伯爵も、面白そうに目を細めた。 「うふふふ、ご所望ならば、六本セットからお売りしましょうか? 値段はこれほどで済みますよ」 「おお、案外安いではないか。よし、わしの侯国で予約注文させてもらおう」 「お買い上げありがとうございます、ハルデンベルグ侯爵。今すぐ手配いたします。 我々の新兵器はまだまだありますから、じきにお見せしましょう。実戦の場でね」 死の商人が笑う。戦争は戦争によって栄養を取る、この軍拡の原理はいつ、どこの世も変わらない。 『ヒンデンブルグ』号には、鈎十字(ハーケンクロイツ)の軍艦旗がはためいていた……。 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
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ルボロー 飛行船の乗客で、若き考古学者 モンスターのルーツを調べるため 世界中を旅している